日本における無痛分娩の現状
日本ではお産は自然が一番、我慢することが美徳いう思想が古くからあります。また、に妊娠中に薬剤を使用することに抵抗を感じる妊婦さんも少なくありません。
わが国での無痛分娩の実施率は上昇傾向にあるとはいえ、2024年では16.2%と医療先進国の中では著しく低いのが現状です。
アメリカ(73%)、フランス(82%)と比較すると依然として低い水準にあります。
日本では一般的に「無痛分娩」といいますが、英語では”labor analgesia(分娩時の鎮痛)”といいます。つまり、全く痛みのない「無痛」という解釈ではありません。この誤解を避けるために「和痛分娩」という表現をとっている施設もあります。
妊婦さんの高齢化、社会的ニーズの変化などにより、今後無痛分娩を希望される妊婦さんはさらに増加してくると考えられます。
当院における無痛分娩
当院で無痛分娩を受けられた妊婦さんは、年々増加傾向にあり、令和7年は571名でした。これは経腟分娩を試みた妊婦さんの約6割に当たります。
計画無痛分娩はもちろん、自然陣痛を待っての麻酔導入も24時間対応しています。お産の途中から無痛に切り替えることも可能です。無痛分娩には主に「硬膜外麻酔」を用いていますが、どうしても背中から針を刺されるのには抵抗がある、という妊婦さんには「ペチロルファン」という全身投与の麻薬系鎮痛薬も用意しています。
当院では「安全且つ快適な無痛分娩」を目指しています。当院ではJALA(無痛分娩関係学会・団体連絡協議会)の趣旨に賛同し、無痛分娩に関する情報公開およびJALAで推奨されているJ-CIMELS(日本母体救命システム普及協議会)講習会を受講しています。
川俣医師は、心疾患・脳疾患を持った多くのハイリスク患者さんに対して、完全無痛分娩を行ってきました。その結果、分娩のごく早期から麻酔を導入すると、約半分の確率で回旋異常(分娩時の胎児の体の向きが異常な状態で母体の骨盤内に進入してくること)がおこることを経験しています。無痛分娩は陣痛の痛みををとってくれる大きなメリットのある方法ではありますが、そのデメリットも十分理解された上で受けられることをお勧めします。
当院での分娩の大きな特徴として、鉗子分娩を行なっていることが挙げられます。無痛分娩下で無理な吸引分娩をすると、帽状腱膜下血腫が起こったり、同時に産婦さんのお腹を押すので、子宮破裂のリスクが高まります。なにより、吸引分娩ではベビーの頭の下降がわかりにくいので、経腟分娩が可能なのかそうでないのかわからず、無理な吸引分娩は本当に危険です。鉗子分娩は技術の習得は難しいですが、無痛分娩の際は強力な武器となります。
当院では、2020年より「無痛分娩」に容易に接していただくため、当院で出産予定の30週以降の妊婦さんを対象に、毎月第3火曜にZOOMを用いた「無痛分娩教室」を行っています。約1時間かけて無痛分娩のメリット、デメリットを解説させていただいています。特に初めてお産に望まれる産婦さんは不安の多いことと思います。「ちょっと聞いてみよう」とか「無痛にしたくなった時の保険に」でもかまいません。無痛分娩に関する疑問にも答えさせていただきます。ぜひ一度聴講してみてはいかがでしょうか?
無痛分娩に関する情報はこちら(JALAのサイトへ移動します)
https://www.jalasite.org/
当院における無痛分娩の方法
当院では原則として、「硬膜外麻酔」による無痛分娩を行っています。
硬膜外麻酔とは、背中からカテーテルを硬膜外腔に挿入し、局所麻酔薬によって下半身の痛みを軽減する方法です。痛みの感じ方は主観的なものであり、個人差が大きく疼痛軽減が不十分と思われる妊婦さんに対しては、全身投与による麻酔薬を追加する場合もあります。
当院では局所麻酔薬注入用のポンプとして、鹿児島県の産婦人科では初めてJMS製i-Fusorを導入いたしました。
これはPCA(patient controlled analgesia)、つまり妊婦さんが痛みを感じた時に自分で局所麻酔薬を注入できるタイプの輸注ポンプです。PCAを併用することで、不要な麻酔薬量を減らせることが報告されており、母児に対してより安全性の高い無痛分娩が提供できると考えられます。

無痛分娩教室開催・・・第3火曜日16:15~17:00にて「ZOOM」アプリを使用して行っています。
JALA(無痛分娩関係学会・団体連絡協議会)「無痛分娩に関する情報公開」
作成日2026年6月30日
YouTube動画がご覧いただけます。
こちらよりどうぞ!


