子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、性器脱などの治療には手術が必要なことがあります。特に妊娠を考えておられる方の手術は、子宮と卵巣の機能をできるだけ損なわないように細心の注意を払っています。
婦人科手術の方法は、開腹手術、腹腔鏡手術、膣式手術(腟からの手術)があります。開腹手術は、おなかを約10~12cm切開し、手術を行います。当院では原則、下腹部横切開で行っています。腹腔鏡下手術は、おへそから腹腔鏡というカメラを挿入して腹部に2~3カ所の穴をあけて行う手術です。傷が小さいため、早期退院、社会復帰が可能です。腟式手術は性器脱に行う子宮脱手術、子宮頚部異型上皮や子宮上皮内がんに行う子宮頚部のみ一部摘出する、子宮頚部切除術などがあります。
子宮全摘術
開腹手術で行います。子宮筋腫、子宮腺筋症に対して子宮全部を摘出する手術です。卵巣、卵管は必要に応じて摘出か温存かを選択できます。子宮摘出後、膣は断端を縫合しているので、性行為は膣の治癒が落ち着くまで控える必要があります。
子宮筋腫核出術
開腹手術で行います。子宮筋腫のみ摘出し、子宮は温存する手術です。子宮筋腫は、発生する場所によって貧血の原因になる場合があります。そのためホルモン療法(偽閉経療法)をすることで貧血を改善し、筋腫への血流を減らすことで手術中の出血量を減らしたりします。また出血が増えそうなときは、手術前に自己血を貯血することもできます。
卵巣嚢腫摘出術(腹腔鏡下、開腹)
主に腹腔鏡下手術で行いますが、開腹手術で行う場合もあります。卵巣嚢腫のみ摘出し、卵巣は温存する手術です。基本的に良性の卵巣嚢腫に対して行われる手術です。卵巣は温存できますが、まれに嚢腫の再発があります。
異所性妊娠手術(腹腔鏡下、開腹)
主に腹腔鏡下手術で行いますが、緊急時は開腹手術で行う場合もあります。異所性妊娠とは本来子宮内部に着床するはずの妊娠卵が、子宮内部以外の場所、卵管内や腹腔内に着床してしまった結果、痛みや出血のリスクになる疾患です。早期発見が大切になります。手術は患部の妊娠組織の除去です。卵管内妊娠であれば再発防止のため患部卵管切除を行っています。かなり早期の場合は薬物治療ができるときもあります。
性器脱手術(子宮脱手術)
膣式手術で行います。性器脱は主に子宮が下降していて、それとともに膀胱、直腸も下降してきます。したがって子宮が下降している症状と頻尿、残尿感などの症状も出てくることがあります。手術はまず子宮を摘出し、下降している膀胱、直腸を元の位置に戻す会陰形成を行うことによって再発を防ぐようにしています。
子宮頚部切除術
膣式手術で行います。子宮頚部異型上皮、子宮上皮内がんなどに対して、子宮頚部を部分切除する手術です。子宮頚部を一部摘出するため、今後、妊娠を希望する方の場合、妊娠中に頚管無力症、切迫流早産のリスクがやや上がりますので半年間は妊娠をひかえていただくことがあります。
子宮鏡下手術
式手術で行います。子宮の内腔に出ている粘膜下筋腫、内膜ポリープに対して子宮鏡というカメラで見ながら核出する手術です。腹腔鏡と同様、早期退院が可能です。日帰り手術もできる場合もあります。粘膜下筋腫や内膜ポリープを摘出することで月経時の出血量を減らしたり、不妊症の原因除去をすることができます。
その他
会陰部いぼの切除、嚢胞切除、子宮ポリープ切除などの日帰り手術も行っています。
当院での婦人科手術の実績をお示しします。
術 式 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | |
子宮全摘術 | 開腹 | 14 | 8 | 12 |
子宮筋腫核出術 | 開腹 | 7 | 5 | 4 |
子宮筋腫核出術 | 膣式(膣内に出ているもの) | 1 | 3 | 3 |
卵巣嚢腫核出術 | 腹腔鏡下 | 10 | 12 | 15 |
卵巣嚢腫核出術 | 開腹 | 8 | 5 | 7 |
子宮脱手術 | 膣式 | 6 | 2 | 3 |
子宮頚部切除術 | 膣式 | 13 | 16 | 18 |
子宮内膜ポリープ切除術 | 膣式 | 4 | 8 | 5 |
異所性妊娠手術 | 腹腔鏡下 | 4 | 3 | 3 |
異所性妊娠手術 | 開腹 | 1 | 0 | 1 |
膣中隔切除術 | 膣式 | 1 | 0 | 0 |
子宮鏡下筋腫核出術 | 膣式 | 0 | 0 | 0 |
卵巣出血手術 | 腹腔鏡下 | 0 | 0 | 1 |
合 計 | 70 | 62 | 72 |